メゾンオブジェ2025レポ

インテリアコーディネートを考える

5年ぶりのメゾン・エ・オブジェで感じたインテリアトレンドの変化

毎年パリで開催されるインテリアの国際見本市・メゾン・エ・オブジェに行ってきました。前回訪れたのはコロナの直前だったので、実に5年ぶりになります。

この5年の間に、インテリアのトレンドはびっくりするくらい、大きく変わっていました。

まずは今シーズンのトレンドカラーからご紹介します。特に印象的だったのが「ブラウン」

この色の存在感は地球を連想させる「土」を身近に思わせるような、オーガニックで優しい茶色が目立ち、温かみのある自然な雰囲気がインテリア全体に広がっていました。

人気のグレージュとの相性も抜群。上質で上品な空間です。

素材も大きく変化していて、椅子にはロープを編んで作られたデザインが多く見られ、Yチェアの原点回帰のようでした。

直線的でモダンでシャープな印象ではなく、角が丸く柔らかい印象のものが主流になっています。

ファブリック素材も、ふわふわとした羊の毛のようなもこもことしたテクスチャーが多く、触れるだけで癒されるような質感が重視されていました。

全体的に見ても、どのブースも優しくナチュラルで暖かい空間ばかり。

洗練されているけれど決して冷たくはなく、包み込まれる繭のような安心感があります。

それに比べて、コロナ前はまるで別世界。

あの頃は、どちらかというと「攻めた」インテリアが目立ちました。

例えば、大きく煌びやかなシャンデリアや、艶めく大理石、ゴールドを贅沢に使ったデザインが主流で、アートも少しエロティックな色気を感じさせるものが多かったように思います。

豪華な家具やインテリアはリッチでゴージャスの極み。

家族のため、というより他人に力を見せるための空間、富を誇示するためのパーティーハウスの提案が多かったこと思います。

しかし今回はまったく違いました。「自分たちのための心地よい空間」

コロナ前ももちろんこのようなインテリアの提案はあったのですが、一気に加速したと思います。

キーワードを挙げるなら、

リラックス・安心・温かさ・家族・優しさ・包み込まれる・安心感・オーガニック・自然と共存

こんな感じでしょうか。

まさに「COZY(居心地の良い)」という言葉がぴったりのトレンドです。

コロナという大きな出来事を経て、人々の価値観そのものが根本から変わったことを強く実感しました。

変化するインテリア業界とヨーロッパの柔軟性

今回のメゾン・エ・オブジェでは、もう一つ気になったことがありました。それは会場のブースの規模が縮小していたことです。

以前はハイブランドがこぞって出展していたインテリアゾーンが、今回はややこじんまりした印象になっていました。

KENZOやMISSONIといったハイブランドが手がけるインテリアブースも姿を消し、全体的に以前よりも落ち着いた雰囲気になっていました。

会場を回遊していると、偶然にも東京と福岡で輸入インテリアショップを経営している社長とばったり再会するという驚きの出来事がありました。

声をかけてくださって嬉しかった!こんなことってあるんですね。

彼は毎年メゾンだけでなく、世界中を飛び回って家具の仕入れをしているので、最新のインテリア市場についてのお話を聞くことができました。

特に興味深かったのがヨーロッパブランドの製造背景の変化です。彼曰く「企画はヨーロッパで行われているけれど、工場はほぼ中国になっている」とのこと。そのスピードはかなり加速してるのだとか。

確かに会場を見ていても、ヨーロッパブランドとそっくりのデザインの家具を扱う中国企業の進出が目立っていました。

ヨーロッパのインテリアデザインは、何世紀にもわたって育まれた精神や哲学が根底にあります。

そのため、ただの流行ではなく、時代とともに変化しながらも本質的な美しさを保ち続ける強さがあります。

新しいトレンドを受け入れながらも、しっかりとそのブランドのアイデンティティを守っている点に、改めて彼らの柔軟性を感じました。

やはり、ヨーロッパのデザインは奥が深い。

そして、その変化の中にはリアルな「人の暮らし」が息づいているのが魅力だと、改めて感じた今回のメゾン・エ・オブジェでした。

今回は全体的なレポートでしたが、数回に分けてもう少し詳しくご紹介していきますね。

エリィ

インテリアコーディネーター・整理整頓アドバイザー・ラジオパーソナリティ|大手ゼネコン・建築設計事務所を経て、130店舗以上を展開する某カリスマ美容家の企業の...

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